業務報酬

■区分E技術者

「建築省告示第1206号」では、業務経費の算定に関して簡略な計算方法によることができるとしています。略算方法と称し、直接経費と間接経費の合計を、直接人件費の算定に当って、標準業務人・日数による方法が示されています。 告示に先立って各種の実態調査が行われ、最近の事例について、標準的な業務に対して投入されていた人・日数のデータを集め、これを統計分析して、建物の用途と工事費の規模に応じて、平均的に必要と考えられる業務量の推定式を求めた。
 この際、個々の技術者の業務処理能力が、所要業務日数に及ぼす影響を補正しなければならないので、技術者の建築士資格級別と資格取得後の経験年数に基づいた補正係数を設定し、一定のレベル(1級建築士免許取得後2年相当又は2級建築士免許取得後7年相当の業務経験を有する者:通称Eランク)に統一した。

 また、標準業務人・日数は、別に示された標準業務表の業務を行う場合に必要な業務量であって、特別な業務や部分的な業務の依頼に当っては加除することが必要であり、建築のニーズ、技術、制度等、変化する業務環境の今日的状況に合致した業務基準及び報酬算定方法が、告示の主旨に沿って、それぞれの建築士事務所に用意され、これが依頼主に対して常に開示されていることが必要であり、一つの目安として下さい。


■標準業務人・日数の算定式

 実態調査は、建築省に設置された建築設計工事監理業務報酬調査委員会が行ったもので、第2類の標準的な条件のもとに、設計と工事監理を合わせて行った事例について回帰分析した結果、下式を得た。
設計業務について Y=0.0261X
工事監理業務について Y=0.0224X
ただし、X:工事費(単位1000円)

     Y:所要業務量(単位人・日)

これに、調査時点と告示の時点との間の物価変動の影響を補正し、かつ類別間の格差を考慮して告示の表となったものである。
 なお物価の変動による補正はその後も必要であるので、解説書にその方法が示され、これに基づいて計算したものが、(社)日本建築士事務所協会連合会によって毎年公表されている。


■技術者のランク

 上記の回帰式を求める際には、実際の人・日数に以下の率を掛けて、全てEランクに換算した値について計算したものである。
A:1.83 B:1.80 C:1.56 D:1.23 F:0.69
各ランクの判定は表2-3-1による。
 
表2-3-1 建築士の資格及び免許取得後の
       業務経験年数等による区分
区分 1級建築士取得後の
業務経験年数
2級建築士取得後の
業務経験年数
大学卒業後の
業務経験年数
A 18年以上 23年以上 23年以上
B 13年以上
18年未満
18年以上
23年未満
18年以上
C 8年以上
13年未満
13年以上
18年未満
13年以上
D 3年以上
8年未満
8年以上
13年未満
8年以上
E 3年未満 5年以上
8年未満
5年以上
F 上記各欄に該当しないもの


■標準業務人・日数表

区分 建築物の用途等 業務内容
区分
工事費
1,000万円
1,500
万円
2,000
万円
3,000
万円
4,000
万円
5,000
万円
6,000
万円
8,000
万円
1
億円
2
億円
3
億円
4
億円
5
億円
6
億円
7
億円
8
億円
9
億円
10
億円
20
億円


1

工場、車庫、市場、倉庫等 設計       52 64 76 88 110 130 221 302 376 447 513 578 640 701 759 1,292
監理       26 32 38 43 53 63 103 137 168 198 225 251 276 301 324 532
      78 96 114 131 163 193 324 439 544 645 738 829 916 1,002 1,083 1,824


体育館、観覧場、学校、研究所、庁舎、事務所、駅舎、店舗、共同住宅、百貨店、寄宿舎等及び1類の複雑なもの 設計       57 72 85 98 122 144 245 335 418 495 570 641 710 777 843 1,433
監理       29 36 42 48 59 69 114 152 187 219 249 278 306 333 359 590
      86 108 127 146 181 213 359 487 605 714 819 919 1,016 1,110 1,202 2,023


銀行、美術館、博物館、図書館、公会堂、劇場、映画館、集会場(オーディトリアムを有するものに限る)ナイトクラブ、ホテル、旅館、料理店、放送局、病院、診療所、複合建築物等及び1,2類の複雑なもの 設計       63 79 93 107 134 159 270 368 456 544 626 704 780 854 926 1,574
監理       32 40 47 53 65 76 125 168 206 241 275 307 338 367 396 650
      95 119 140 160 199 235 390 536 665 785 901 1,011 1,118 1,221 1.322 2,224

4類
戸建住宅
 (一般的な木造戸建住宅を除く)
設計 25 36 47 67 87 106 125 162 198 367 528  
監理 13 18 23 34 44 53 63 81 99 184 264
38 54 70 101 131 159 188 243 297 551 792
一般的な木造戸建住宅を除く 設計 14 20 24 33 41 48 55 69 81  
監理 7 10 12 16 20 24 28 34 41
21 30 36 49 61 72 83 103 122
●この表は、平成12年度の建築工事費デフレーターにより推定した数値である。
 なお、新耐震設計法等により付加的に必要となる業務に係るもの、電算機使用の場合の変動要素等は加味されていない。
 また工事監理等の業務人・日数は、非常駐監理の場合である。
※この表(Pa)は、1級建築士の免許取得後3年未満、又は2級建築士の免許取得後5年以上8年未満の建築に関する業務
 経験を有する者が、設計又は工事監理等を行うために必要な業務人・日数の標準を示したものである。
 なお、標準日額人件費(Pb)は上記技術者の人件費とする。
●告示に掲げられていない工事費に対する人・日数は、実態調査に基づく推計式を利用して求めた。
●この表の工事費は、消費税に相当する額を控除したものである。

■略算方法による標準業務報酬の算定参考例

●工事費が5億円の公会堂(設計料及び工事監理料)の場合
(Pa) は上表の標準業務人・日数表より設計が544人日、工事監理が241人日で合計785人日となる。
なお、その他の条件を上記とする。
(Pb) は1級建築士の免許取得後3年未満の人件費とし、具体的には、その地方の建築士事務所の実態を踏まえて定めるものであるが、ここでは仮に29,600円とする。
(F) は市民センターとしての観点より、それに要する技術力、創造力等の対価とし0.5Pとする。
(R) は特に遠隔地への出張や、特許使用料はないものとし0とする。
以上によると、
 
C = 2.0P 0.5P T
  = 2.5P T    
      (Pa)     (Pb)
 
  = 2.5×

785

人日 ×
29,600
+消費税に相当する額
  = 58,090,000円+消費税に相当する額


■業務内容との対応

告示と同時に出された住宅局長通達に、以下のように説明されている。
『・・・標準業務内容は、建物の質を確保し、建築主の意図を具体化させるために一般的用途に供する建築物において共通に行われる主な業務を示したものであるので、個別の業務において必要となる別表に掲げるような業務については、その必要な業務に対応した業務人・日数を付加する等の調整が必要である。・・・』
ここで、別表というのは、調査・企画業務をはじめ、電子計算機の利用、高度の構造解析、工事費内訳明細書、模型、竣工図等の作成など標準業務に含まれない業務で、その主要なものを表2-3-2に示す。

 
表2-3-2 標準業務に含まれない主な業務
(1) 調査研究・企画 (2) 設計
業務内容 成果図書
1. 設計対象となる建築物に適
  応する敷地を選定するため
  に必要な各種の条件に関
  する調査研究・企画の業務
2. 設計対象となる建築物の用
  途、規模、建築形式等の設
  計上の基本的条件を確定す
  るために必要な各種の基礎
  的条件に関する調査研究・
  企画の業務
3. 設計対象となる建築物がよ
  うする工事費予算を確定す
  るために必要な業務
4. 設計対象となる建築物が周
  辺環境に及ぼす影響を事前
  には握する業務
1. 調査研究・企画報告書
2. 概略計画図書
業務内容 成果図書
1. 建築確認申請以外の各種
  法令手続のための技術資
  料の作成又は技術的努力
2. 公聴会等の手続又は出席
  に当たっての専門技術の提
  供若しくは図書の作成
3. 周辺地区住民に対する説明
  立ち会い
4. 通常の設計図書以外の資
  料の提供
5. 依頼主の都合その他条件
  の変更等による設計変更の
  処理
6. 電子計算機の利用
7. 土質・近隣構造物等に関す
  る調査又は自動助言
8. 高度の構造解析、特殊構造
  の採用等により増加する業
 
9. 特需技術の開発
1. 透視図(完成予想図)
2. 模型
3.

日影図(日照図)

4. 各種技術資料
5. 工事費内訳明細書
6. 変更訂正図
7. 維持管理費の算出
(3) 工事監理等
業務内容
1. 工事請負契約が複数の場合の調整業務
2. 現場、工事等における特殊な作業方法、仮設方法及び工事用機械器具について検討助言する業務
3. 竣工図の作成